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気管支サーモプラスティ

はじめに

気管支サーモプラスティ気管支喘息とは、「気道の慢性炎症を本態とし、臨床症状として変動性を持った気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳で特徴付けられる疾患」であります。2015年の時点で日本での喘息死は1511人で、その半数は過去に重篤発作入院の経験のある重症喘息患者です。重症喘息患者に対する治療として、オマリズマブ、メポリズマブなど抗体製剤治療がありますが、年余に渡る治療継続が必要で高額の医療費がかかります。気管支サーモプラスティは、2015年より保険収載となった重症喘息に対する新規非薬物療法で、高額ですが約2か月の治療で終わります。

気管支サーモプラスティの原理及び作用機序

重症喘息で肥厚した気道平滑筋に対して65℃で温めることで気道壁平滑筋を減少させるのが原理です。内径3~10mmの気管支を対象に、気管支鏡下で専用のカテーテルを挿入し、目的とする気管支でバスケットを開き、65℃で10秒間通電し、肥厚した気道平滑筋を減少、気道平滑筋による気道の収縮能力を抑えるのが機序です。これらの組織学的変化と、喘息コントロール、増悪、救急外来受診などの臨床効果との関連性も認められています。

喘息患者の気管支断面

適応と患者選択基準

気管支サーモプラスティ治療は、高用量の吸入ステロイド薬(ICS)及び長時間作用性β2刺激薬(LABA)で喘息症状がコントロールできない18歳以上の重症喘息患者が対象となります。ICS/LABA治療に加え、ロイコトリエン受容体拮抗薬、長時間作用性抗コリン薬、テオフィリン製剤などの薬物療法を併用しても、コントロール不良であったり、増悪を繰り返したりする方が対象になります。またオマリズマブやメポリズマブ使用患者、ステロイド内服患者なども対象です。

気管支サーモプラスティ治療の実際

気管支サーモプラスティ治療3日前からプレドニゾロン(PSL)50mg相当の全身ステロイドを投与した状態で喘息発作が起きにくい状況で治療を行います。

治療の前日には入院します。静脈麻酔もしくは全身麻酔下で気管支鏡治療を始めます。内腔直径が3~10mmの気管支の部位で、気管支鏡を介してカテーテル挿入し65℃で10秒間通電し気管支壁を加温します。末梢の気管支から5mm毎にカテーテルを引き抜きながら通電を繰り返します。初回は右下葉気管支、2回目は左下葉気管支、3回目は両上葉気管支の治療を行います。1回の治療は60-80回のactivation回数の通電治療で、約1時間かかります。

通常、治療3日目には退院となります(状態により多少前後します。)。 3回の治療は3週間以上の間隔をあけて行ないます。毎回入院での治療となり、1回の治療は入院費も含め約50万円かかりますので、予め高額療養費制度を利用し、3回の治療を上手に計画し2か月以内に収まるように調整します。東京都の大気汚染医療費助成制度の医療券所有者は治療費が助成されます。

これまでの海外での報告

気管支サーモプラスティ治療の効果としては、治療1年後の喘息関連QOL(生活の質)の改善や増悪減少が認められ、その効果が5年間継続することが報告されています。治療1年後には、79%の患者で喘息関連QOLの改善が認められ、重度の喘息発作が32%減少、喘息による救急外来受診が84%減少、喘息による学校の欠席、仕事の欠勤が66%減少しました。また、その後5年間は、重度増悪の患者数が平均44%減少、救急外来受診した患者が平均78%減少しました。

当院での治療成績

当院では2015年2月より気管支サーモプラスティ治療を開始し2017年4月時点で20症例の患者で治療を施行しています(全国一の症例数です)。年齢は33~77歳(平均53歳)の重症喘息で年間増悪平均7回です。高用量ICS/LABAにロイコトリエン拮抗薬、テオフィリン製剤、長時間作用性抗コリン薬などを最大限併用しても、喘息コントロール不良であったり、増悪を繰り返したりする患者を対象にしています。

治療効果としては、喘息関連QOLの改善した患者が85%、喘息コントロールの改善した患者が64%、増悪改善が認められた患者が85%でした。自覚症状の改善点に関しては、喘息発作頻度の減少、発作治療薬使用頻度の減少、咳の減少、痰の減少、夜間覚醒の減少、深い呼吸が可能に、前胸部重い感じ減少、仕事中断の消失、歩行時息切れ消失など個々の患者毎に様々な効果が得られています。

治療に伴う合併症

気管支サーモプラスティ治療は治療数時間後には一過性に気道がむくみ、治療部位に一致した気道狭窄、喘鳴が生じ、胸部レントゲンでは治療部位に一致した浸潤影が出現します。これらの合併症は翌日をピークに徐々に改善し、1週間以内にはほぼ改善します。ほぼ全例でこの合併症は起こります。

その他の合併症として、治療後に細菌や真菌などの気道感染症を起こす場合があります。また、時に治療後に喀血を来すケースが稀にあります。また喘息発作を起こす場合もあります。これらの合併症に注意しながら経過観察してゆきます。

おわりに

気管支サーモプラスティ治療は日本では2年、欧米でもまだ7年間しか経っていない新規の非薬物療法であります。気管支サーモプラスティ治療5年後以降の長期の有効性や安全性に関してはまだ不明であり、日本人における有効性や安全性に関してもまだデータが不十分です。患者選択には十分吟味し、安全にかつ慎重に気管支サーモプラスティ治療を行なってゆきます。

重症喘息患者で治療適応などお悩みであれば、お気軽にご連絡いただければと思います。
(飯倉 元保:iimotoya@hosp.ncgm.go.jpまで)