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PET-CTとは

がんの診断について

 PETでは全身のがんなどを一度に調べることが出来る

PETとは、positron emission tomography (陽電子放出断層撮影) の略で、放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種です。放射性薬剤を体内に投与し、その分析を特殊なカメラでとらえて画像化します。

CTなどの画像検査では、通常、頭部、胸部、腹部などと部位を絞って検査を行いますが、PET検査では、全身を一度に調べることが出来ます。核医学検査は、使用するくすりにより、さまざまな目的に利用されていますが、現在PET検査といえば大半がブドウ糖代謝の指標となる18F-FDGというくすりを用いた"FDG-PET検査"です。

CT検査などでは形の異常を診るのに対し、PET検査では、ブドウ糖代謝などの機能から異常をみます。臓器のかたちだけで判断がつかないときに、機能をみることで診断の精度を上げることができます。

PET検査は、通常がんや炎症の病巣を調べたり、腫瘍の大きさや場所の特定、良性・悪性の区別、転移状況や治療効果の判定、再発の診断などに利用されています。アルツハイマー病やてんかん、心筋梗塞を調べるのにも使われています。下のような病気で、この検査が必要とされる条件を満たす場合には、健康保険が適用されます。

FDG-PET/CT検査の保険適用(2018年4月改訂)

  • てんかん:外科治療のための病巣診断
  • 虚血性心疾患における心不全:バイパス手術検討のための心筋バイアビリティ診断
  • 心サルコイドーシスの診断
  • 早期胃がんを除く、すべての悪性腫瘍、悪性リンパ腫:他の画像診断により病期診断、転移、再発診断ができない時
  • 大型血管炎

13N-アンモニアPETによる心筋血流診断(2012年)

  • 他の検査で判断がつかない虚血性心疾患

全身を一度に調べられ、予想外のがんの発見に威力を発揮することから、がんの可能性が疑われながら他の検査で病巣が発見できない“原発不明癌”の診断や、がんの転移・再発を調べるのに有力な検査とされています。この特性を利用した、全身のがんのスクリーニング(ふるい分け)を主な目的とする“PET検診”は、当院でも実施しております。“人間ドック”をご参照ください。

 FDG-PET検査はこうして行われる

PET検査を受けるときは、ブドウ糖の代謝状態を正しくとらえるために、

検査前5-6時間は絶食していただきます。水や緑茶などは飲んでかまいませんが、ジュースやスポーツドリンクなど糖分を含む飲み物は禁止です。

検査のためのくすり(18F-FDG)は静脈注射し、全身にくすりが行き渡るまで1時間から2時間は安静にします。その間、体を動かすと使った筋肉にくすりが集まってしまうので、安静に過ごしてください。前日に激しい運動をしても、筋肉にくすりが集まってしまうことがあり注意が必要です。余分なおくすりは尿に排出されるので、撮影の前に排尿をしていただきます。

検査の基本的な流れ

  • 絶食 検査の5~6時間前は絶食 糖分を含むものは飲食しないでください
  • 注射 18F-FDGを静脈注射します
  • 安静 1時間から2時間、安静にしていただきます
  • 撮影 PET装置のベッドに横になっていただきます

撮影自体はPET装置のベッドに横になっているだけで、基本的には30分から40分間で終了します。

PET.jpg
放射性薬剤を用いるため比較的少ないですが、放射線被曝があります。また、使用する薬剤には、アレルギー反応や副作用はほとんど報告されていません。喘息や腎臓病があると、CTなどの造影剤検査が受けられないことがありますがPET検査では問題はなく、安全に受けられます。血糖値が高いと検査の精度が低下する可能性があるので、糖尿病と診断されている方、普段から血糖値の高い方は、あらかじめ相談してください。

2012年11月現在、当院で検査の説明に使っているシートを添付しました。
FDG-PET検査を受けられる患者さまへ:本日の検査の流れ(PDF:88 KB)

FDG-PETの正常全身画像(図1)。

FDG-PETの正常全身画像(図1)。脳、扁桃腺、乳腺、肝臓、腸管、に正常の集積があります。腎から膀胱にFDGの排泄が見えます。これらは、すべて正常の人で見られるもので、がんを疑うような異常はありません。

 

PET検査でがんはどこまで発見できるか

がん細胞は、勝手に仲間を増やして大きくなり、転移などを起こして広がります。その活動のエネルギーの元はブドウ糖で、がん細胞は正常細胞の何倍もの量のブドウ糖を取り込むため、18F-FDGを注射すると、このくすりもがんの病巣に集まります。くすりが集まったところからは放射線が多く放出されるので、それを捕らえて画像化することにより、がんの病巣を見つけ出すことができます(図2)。

癌細胞は糖を食べて仲間を増やす

一般に、がんが1cmほどになればPET検査で発見できるといわれています。PET検査が得意とし、よく早期に発見されるのは甲状腺がんや大腸がんです。不得意の代表が胃がん、特に早期胃がんはPETではわかりません。胃がんは日本人に多いがんですが、PETが役立つのは進行がんの転移や再発の診断など限られた場合になります。胃がんを見つけるには内視鏡(胃カメラ)による検査が最も優れています。前立腺がんや腎臓がん、膀胱がんなどもPETが苦手とするがんです。早期の肺がんを見つけるのもCT検査のほうが精度は高いでしょう。肺がんでは、がんが見つかった後で、転移がないかどうか全身を調べるのにPET検査がよく使われ、大変有効です。このように、がんの種類や状態により、PETの役立ち具合が違います(図3、4)。

X線・CT・PET「診断」

「PET診断」全身がひと目で分かる

現在はPETとCTを組み合わせた"PET-CT検査"が一般的です。くすりが集まる様子を撮影するPETと、臓器の形状を撮影するCTを組み合わせ、一度の検査で両方の画像を重ねて表示することができるようになり、診断精度が向上しています。

肺がんの患者さんのFDG-PET/CT全身画像(図5)

検診で異常が見つかった60台男性。PET-CTでは、右肺門と縦隔リンパ節にFDGが集まり、原発巣(赤矢印)とリンパ節転移(ピンク矢印)と診断されました。生検で低分化肺腺癌と判明し、手術が行われました。
全身像白黒、横断像は上から順にPET白黒像、CT、PET/CT融合像(カラー)。

  • 全身像白黒
  • 横断像は上から順にPET白黒像、CT、PET−CT融合像(カラー)

がんの活性で悪性度を診る

早期の肺がんは、ブドウ糖代謝の低いがんで、PETでもほとんどとらえることができません。一方、肺がんの中には、非常にブドウ糖代謝が高く、18F-FDGが豊富に集まるがんがあります。このようながんは、進行が早く転移しやすいがんで、悪性度が高いため要注意です。つまり、がんでブドウ糖がどの程度使われているか、18F-FDGがどの程度集まるかどうかをPETで見ることにより、がんの性質を予想することが出来ます(図6)。

 「PET診断」”光る物”全てが悪性ではない

がんの形の変化でなく、活性の変化で抗がん剤の効きを診る。

悪性リンパ腫は、リンパ球という血液細胞のがんで、全身のリンパ節が腫れたり、骨や肝臓など内臓に病巣が発生することがあります。この病気が疑われたときは、細胞を取って調べることと同時に、どこまで病巣が広がっているかを診断するのが重要になります。CTでは首や胸、腹など撮影した範囲の多数の断層画像からリンパ節の腫れを診断することが出来ます。PETでは通常、頭から大腿まで全身の画像を撮影し、輪切りの画像から全身像を作り、一目で病巣の広がりを診断することが出来ます。悪性リンパ腫にはFDGが良く集まるものが多く、PETで非常にわかりやすく病巣の広がりを診断することができます。一般的に部分的な病巣だけであれば、手術や放射線治療が、全身に広がっていれば抗がん剤が選択されます。

悪性リンパ腫の抗がん剤による治療は、非常に進歩しています。細胞を詳しく検査して細胞の型を診断し、それにより抗がん剤の種類や治療法が変わります。最初に使う薬、それが効かなければ次の薬、と薬を使う順番も標準が決まっています。薬がよく効いているかどうか、どこまで同じ薬で治療してよいか、いつ次の薬を使うかの判断が治療の成否、いわば生死を分けると言っても過言ではありません。治療が効いているかどうかの診断は、病巣が全身に広がっている状態では、やはり全身を見ないと判断がむずかしくなります。PETで全身の病巣の広がりと病巣の活性を見るのは治療効果を判定するのに大変役に立ちます。

さらに、治療が効いているのにいつまでたっても病巣が小さくならないということがまれに起こります。これは、傷の上に"かさぶた"が出来てふたをするように、がん細胞が抗がん剤で死んだあと、線維がふえて腫れの中を埋めるため、いつまでたってもリンパ節などの病巣が小さくならないという状態が起きてしまうからです。これをがんが残っていると判断してしまうと、必要の無い強い抗がん剤を使うことになり、副作用で苦しんだりします。PETでは、形だけのがんの抜け殻が残っているのか、それとも本当に活性のあるがん細胞が残ってブドウ糖が使われているかどうかを、18F-FDGが集まるかで正しく診断することが出来ます。一方、形の変化を見るCTではこの診断が難しくなります(図8)。

癌は形じゃない”中味”だよ

最近、国際的な悪性リンパ腫の評価基準に、PET検査による評価がを利用することが一般的となっています。最先端の悪性リンパ腫の治療にはPET検査による評価が必須のものになりつつあります。

悪性リンパ腫の患者さんの治療前、後のFDG-PET画像(図9)

悪性リンパ腫の患者様の治療前、後のFDG-PET画像(図9)
治療前(左)、治療後(右)

50歳台女性、悪性リンパ腫(び慢性大細胞B細胞リンパ腫)の治療前の全身画像には、多数のリンパ節、骨の病巣にFDGが集まっています。抗がん剤の治療後、病巣はすべて消失しました。全身の病巣分布とその変化がひと目で把握できます。治療後骨髄に淡くFDGが集まっているのは、白血球を増やす薬に骨髄が反応している所見です。

 

FDG-PETで見えるのはがんだけではない

FDG-PETでは、ブドウ糖がいっぱい使われている場所に18F-FDGが集まり、PETで見えてきます。実は、ブドウ糖をいっぱい使っているのはがんだけではありません。脳神経の活動の元になるのはブドウ糖です。脳はブドウ糖しかエネルギーに使うことができません。心臓や骨格筋は雑食性で、ブドウ糖は働くための燃料のひとつです。FDG-PETの画像をみると、脳に18F-FDGがたくさん集まり、筋肉には運動中や運動後に18F-FDGが集まります。心臓はブドウ糖を使うときだけ18F-FDGが集まります。脂肪酸を使うときは18F-FDGは集まりません。18F-FDGは正常臓器のブドウ糖代謝の指標になります。一方、18F-FDGはブドウ糖そのものではないので、腎臓から膀胱へ、尿の中に排泄されます。撮影前に排尿していただくのは、膀胱にたまった尿の放射能を減らすためです。

病原菌が体に入ってくると、白血球などの免疫細胞が活動して細菌を殺し、壁を作って毒素が体内に広がるのを防ぎます。これらの防衛反応が炎症で、免疫細胞の活動のエネルギーはがん細胞と同じブドウ糖です。ですから、肺炎などの炎症病巣にも18F-FDGは集まります。関節炎や膵炎など原因が細菌ではない病気でも18F-FDGは集まります。こういうFDG-PETの特徴を利用して、発熱が続くがいろいろ検査しても原因がわからない"不明熱"の患者さんにFDG-PETを行うと、他の検査ではわからなかった原因病巣が診断できることがあります。

このように、FDG-PETで見えてくるのは、がんだけではありません。さまざま病気や病気でない体の活動が見えてきます。FDG-PETの診断には、鍛えた専門家の目とともに、問診などの情報が重要です(図10)。

光るのは癌だけではない!

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