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2015年 ベトナム研修生受け入れプログラム実施報告

2015年 ベトナム研修生受け入れプログラム実施報告

既述の様に、ベトナム医療技術者に対して研修事業が行われました。特に要望が強かったCT研修に関する詳細を報告します。以下の様な目的設定を行いプログラムを実行しました。

研修到達目標

当センター CT室のおける研修では、X線CT装置の品質管理を正確かつ継続的に実施する為、基本的な性能評価・管理手法を学ぶことを目的とする。本研修成果が自国での臨床業務における安全性や最適化にむけて波及することを期待。

研修方法 

アンケート調査

研修開始時に, 下記の項目についてアンケートを行った。

  • 自施設のCT装置の撮影プロトコルは誰が決定しているか
  • これまでにCT装置の性能管理について学んだことがあるか
  • 自施設でCT装置の性能評価をおこなったことがあるか
  • 本研修で特に学びたいことは何か
  • 自施設のCT装置で胸部CTを試行した際の被爆線量を知っているか

X線CT装置の画質と線量の評価に関する実習

CT装置の管理にあたり、International Electrotechnical Commission(国際工業規格)が定める受け入れ試験及び不変性試験の項目に準拠し実習を行った。また、本カリキュラムは公益社団法人日本放射線技術学会が主催した「CT装置の性能評価のための基礎セミナー」で実施された項目の一部に準拠し行った。後述する各評価項目について、データ解析を行った。実際の画像と得られたデータを比較し、画質については物理的及 び視覚的特性の相関、相違について評価した。また、線量と画質のバランスににちて実測にもとづき評価した。

  1. 画質の簡易評価 (Standard Deviation, Contrast to Noise Ratio)
    撮影線量が実空間領域における画質に及ぼす影響を一定の指標を以て理解する。
    e.g. 4倍差の撮影線量で得られる画像の比較 (再構成関数の変更も含めて)
  2. 画質の精密評価1(Noise Power Spectrum)
    撮影線量が空間周波数領域における画質に及ぼす影響を一定の指標を以て理解する。
    e.g. 4倍差の撮影線量で得られる画像の比較 (再構成関数の変更も含めて)
  3. 画質の精密評価2 (Modulation Transfer Function)
    回転中心と周囲の空間分解能の差異を理解する。
    e.g. 中心(10~20mm)と周辺(130mm)のMTFの算出, ワイヤファントムを傾斜し,スライス厚を変化させる
  4. 撮影線量の評価 (Computed Tomography Dose Index)
    測定方法を学び、CT装置の操作画面に表示される値との差異を比較し、精度を検証する。次に、CTDIファントム上方に変異し同様に実測する。実測値(center and Peripherals ) より線量分布を推測し、ポジショニング時の注意点について再考する。 

 評価結果のまとめ

帰国後、自施設のスタッフにプレゼンテーションが出来るよう、本研修内で取得したデータを解析しパワーポイントにまとめた。プレゼンテーションの内容は同一とし、Mr.Bui Van Phamは英語で作成し、Mr. Nguyen Tuan Dungはベトナム語にて作成した。それぞれの言語でまとめることで、我々が英語にて添削し、意図したリバイスを柔軟に行うことができる。研修最終日(12/4 )に当院RTを対象にプレゼンテーションを行った。各部門責任者から様々な視点によって助言を受け、スライドの更なるブラッシュアップの糧となった。

研修の有効性

ベトナム国と本邦で施行される検査のレベルに明らかな齟齬はみられない。理由として、高水準のX線CT装置を有しており、メーカーから装置使用手順を適切に教授されているためである。しかし、CT撮影時に設定される詳細なパラメータはブラックボックス化されていることが明らかとなった。つまり、撮影手順を適切に操作するだけの業務となっており、パラメータが起因する画質や被ばくの影響における理解は極めて乏しい。本研修でブラックボックス化された点を重点的にカリキュラムに組み込んだ。簡易的な実験器具の作成、画質及び線量の評価、評価値の解析及びプレゼンテーション等、 実践的な研修が行われた。実習終了後、研修生両名より座学や教科書ベースでない本実習について良い印象を与えていた。画質及び線量の取り扱い方を具体的に学び理解できた点について、感謝の意を述べられた。

最後に、ベトナム国の教育環境等から勘案し、次年度以降もカリキュラムは同様で良いと考えられる。Mr. Bui Van Phamは自身の学位取得 (MS. and PhD) を望んでいた。しかし、ベトナム国にはそれを対象とする教育機関は存在せず、国際的な進学も視野にいれていた。それには、今後、正しく研究が出来る環境の整備が必要でありNCGMの支援体制の緩和化されることを望んでいた。

診療放射線技師CT担当
新井