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ラオス国における国際展開推進事業

国立国際医療研究センター病院

診療放射線技師 高野寛之



この度、3年間にわたるラオス国への国際展開推進事業における最終プロジェクトに参加した。その事業内容及び活動について報告する。

国際展開推進事業について

目的

医療技術等国際展開推進事業は、国際的な課題や日本国における医療政策、社会保障制度等に見識を有する者や我が国の医療従事者、医療関連産業の技術者等を関係国へ派遣及び関係国からの研修生の受入を実施し、必要に応じて対象国の公衆衛生水準の向上を図りながら、主な協力テーマである「我が国の公的医療保険制度等の日本の医療制度に関する経験の移転」や「我が国の医薬品、医療機器、医療技術の導入」等を推進することである。

主な事業内容

日本の医療政策や社会保障制度等に見識を有する者や日本の医療従事者、医療関連産業の技術者等を関係国に派遣し、または諸外国の医療技術者や保健・医療政策関係者等を受け入れ、機材を活用した技術的な研修や、医療環境整備に関する研修、情報システムの構築や国際的な課題(新興再興感染症、高齢社会対策、保険医療、栄養改善、災害等)への対応に関する研修等を行うことである。

 

ラオス国における放射線技術支援事業

 事業背景

 ラオス国においては、日本の無償資金援助による病院建設及び医療機器の導入が現在進められている。医療機器のみが導入されたとしても、専門的な知識と技術が無ければ目標とする医療の質向上は困難であり、ハード面を中心とした事業のみならず、現場の実情に合った技術支援を行う必要性がある。

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現在建設中の新棟



事業目標

 ラオス国の中心的存在であるセタティラート病院にて本プロジェクトを展開し、プロジェクト終了後においても、セタティラート病院がラオス国内の病院及び実習生への技術教育を十分担うべく機能を持ち、ラオス国全体の放射線技術を向上させることを目標とした。

具体的な項目としては、以下6個の大項目を設定した。

  1.   保守管理・修理記録管理
  2. デジタルシステムの基礎知識
  3. 医療安全・感染防止対策
  4. 地域に貢献できるための病診連携体制
  5. X線撮影技術の教育体制 
  6. 医療被ばくに対する基礎知識

 

事業内容

日本での研修内容が活かされているかの追跡調査及びフォローアップとなる。日本へ研修生を招き、研修期間が終了したのちにラオス国へ赴き、現地での追跡調査という流れになる。


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今回の現地活動内容

今回、私が参加させていただいた活動内容を下記に記す。

  1. 3年目における最終の追跡調査
  2. 作成した放射線技術に関する教科書の供与
  3. 放射線技師教育の現状視察(医療技術科学大学)
  4. 最終ワークショップの開催
  5. プロジェクト終了に伴う現地関係者との意見調整

保健省、セタティラート病院、医療技術科学大学

ラオス国での活動はまず、セタティラート病院長との会談から始まった。最後の活動となるにあたり多くの意見調整が行われた。建設中の新棟の事もあり本プロジェクトの存続が強く望まれつつも、終了にあたっての発展的意見交換が行われた。

次に、主に放射線技師との意見交換と、実態把握として業務状況の視察及び日本での研修内容が活かされているかの追跡調査を行った。

検証の結果、先に述べた事業目標はおおむね達成しており、この3年間のプロジェクトの成果は大きかった。しかし、建設中である新棟での新規機器導入における支援事業も行う予定であったが、新棟建設が遅れたことによりこのプロジェクト内で行うことができなった。現地での教育に役立つよう当院スタッフの作成した教科書を残してきたので、新病院においても大いに役立つ書物になることを願っている。

 

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    病院長との意見調整

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    教科書の供与

 

 

 

その後、セタティラート市内にある医療技術者を養成する医療技術科学大学の視察と、学長との意見交換を行った。この大学は日本と同様の四年制を採用しているが、放射線技術の学科を備えている。ラオス国には放射線技師の教育機関が国内に1か所しかないため、ラオス中から多くの学生が集まってくるとのことであった。しかしラオス国では放射線技師免許制度が存在しないため、免許制度創設が課題となっていた。

 

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    学長とのディスカッション

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    大学の外観

 

 

 研修最終日に、3年間の総括であるワークショップを開催した。研修生は日本での研修成果の発表を、メインの講演を担当した私は、放射線のリスクと安全性について講演を行った。その後、持木主任から本事業の成果について報告し、松永技師長が3年間の総括を行った。セタティラート病院の院長先生および医師をはじめとした多くの病院職員、および日本からお越しいただいた国際協力局の三好部長に終始参加いただいた。被ばくに対する多くの討議もありワークショップは盛会裏に終了した。また、ワークショップには近隣の施設関係者や学生等も参加していたため、放射線についての知識を広く共有することができた。

 またこのワークショップはラオス国メディアの関心も高く、複数のメディアが取材に来ていた。写真はラオスの主要新聞Vientiane timesのものである。

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    ワークショップの様子

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    ワークショップポスター

 

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    ワークショップ終了後の関係者集合写真

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    新聞記事




最終の帰国日にJICA事務所にて意見交換を行った。病院建設と医療機器導入はJICA事業であるため、機器導入における所感を説明し意見交換を行った。今後はJICAによるサポートのもと、機器導入を含めた新病院立ち上げがつつがなく行われていくことを願っている。

 

今回の活動に参加して

 私自身初めて国際展開推進事業に参加させていただいた。現地に赴き、実際に見聞きしたことによって我々は如何に恵まれた環境にいるのかということを改めて感じさせられた。そして日本のサービスに関して如何に品質が高いものであるのか感じ取ることができた。

また、我々と現地の放射線技師の方々とは業務時間も違えば、業務に対する心構え、価値観も違うことであろう。そのような方々に何かを指導することの難しさというものを知ることができた。

 今後、セタティラート病院は新棟の建設及びそれに伴う大型機器の搬入が行われる。タイミングが合わず、装置が実際にない状況での指導であったため難しいこともあったが、三年間の研修内容をしっかりと思い出し、提供した教科書を有効活用していただきたいと思っている。