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原因不明の熱をPETで診断
-日本の多施設共同研究が米国核医学会の注目発表に選ばれる-

2011年6月7日

国立国際医療研究センター放射線核医学科 窪田和雄医長らのグループは、北海道大学、東北大学、獨協医科大学、横浜市立大学、京都大学の研究者と共に、原因不明の熱をPET※1で診断する多施設共同研究を実施し、PETが高い診断精度を示すことを明らかにし、6月5日から米国テキサス州サンアントニオで開催される第58回米国核医学会総会で発表しました。

この発表は6月6日午前11:30(現地時刻)からの同学会主催の記者発表で特に注目すべき研究発表としてプレス・リリースされました。
この研究の詳細は、学会での発表とともに、論文が日本核医学会英文機関誌Annals of Nuclear Medicine より出版される予定です。
今回の発表が米国核医学会で注目された要因は、以下の点です。

  1. 今まで診断に多くの時間と検査が必要であった「不明熱※2」の診断を、一度だけ非侵襲的なPET検査を行うことで可能となることが、世界で初めて報告された。
  2. PET検査での診断精度は非常に高いものであった。(感度※381%、特異度75%)
  3. 病院の性格と最終診断の病名によって、感度・特異度に一定のパターンがあることを見いだせた。

本発表の概略

長く続く発熱は、放置すると命の危険にさらされる一連の病気の兆候かもしれません。このようなとき、PET検査は一回の全身撮影で原因病巣を高い精度で診断し、正しい治療につなげることができます。日本の多施設共同研究ではじめてこの詳細を明らかにしました。

本発表内容の説明

  1. PET検査は今や世界中でがんの診断に広く使われるようになっています。脳の検査や心臓の検査でも使われています。窪田らの臨床研究は、PET検査が炎症病巣の診断に有効であるという、今までなじみのなかった新しい分野に応用範囲を広げるもので、画期的な診断法の開発となりました。
  2. 不明熱というのは、ただ原因のわからない熱のことを言うのではありません。“38℃以上の発熱が3週間以上の期間繰り返し出現し、1週間の入院検査でも診断がつかない”病状を示す、一連の疾患群のことを言います。
    この疾患群を構成するのは、リンパ腫などの悪性腫瘍、心内膜炎や結核など種々の感染症、動脈炎などの膠原病、薬剤アレルギーなど極めて多岐にわたり、正しい診断に基づく治療をしないと命の危険にさらされます。このため正しい診断をつけるために、さまざまな血液検査やX線検査、超音波検査、CT検査などが行われます。
    PET検査は、一回の検査で全身の画像を撮影することができ、高い精度で腫瘍も炎症の病巣も検出でき、大変効率的に原因病巣を特定することができます。病巣を特定できれば、検体を採取し病理診断や細菌を特定することが容易にできます。
  3. 今回の多施設共同研究では、6施設で81人の不明熱の患者様のPET検査を実施し、76人を分析することができました。その結果全体で、感度 81%(特定の原因病巣があった患者52人中42人を正しく診断した。)特異度 75%(特定の原因病巣がない患者24人中18人を病巣がないと診断した。)という診断成績を得ました。最終診断別にみると、感染症や腫瘍などで特に高い 感度 が得られました。病院別にみると、感染症や腫瘍などの疾患が多い病院では 感度 が高く、膠原病やその他の慢性疾患が多い病院では 特異度 が高くなりました。最終診断の疾患の種類により、また病院の性格により成績が異なるということは、世界で初めての報告です。

PETで正しく診断されたケースの例

50歳台男性、腎不全で透析中、高熱が3週間続き、原因が不明で紹介されました。CTでは感染源は不明。
FDG-PETの全身像で、以前に行われた大動脈瘤の手術で置き換えられた人工血管とその周囲に高いFDG集積がみられ、人工血管の感染であると考えられました。血液からは黄色ブドウ球菌が検出され、感受性のある抗生剤で治療が行われました。治療後のPETでは、異常所見が消失し、感染病巣が間違いなく治療できたことが確認できました。

  • 治療前

    大動脈周辺に集積が見られる

  • 治療後

    大動脈周辺の集積が消失した

用語解説

  1. PET検査(陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography))
    ブドウ糖によく似た物質に、ポジトロンという放射能を出すフッ素18という半減期の短い(109分)放射性物質を標識した薬剤(FDG)を注射し、1時間後に撮影装置(PET)で撮影し、薬剤の体内分布を画像化します。これにより、体の中のブドウ糖代謝の高低を表す画像が得られます。PET/CTではブドウ糖代謝の画像と、CTで見る形態画像を融合させてより高い精度で診断できます。がんや炎症病巣ではブドウ糖代謝が盛んになっており、FDGが病巣に集まり、全身画像のなかから病変を容易に検出することができます。
    今の保険適応は、てんかん、心筋梗塞などによる心不全、早期胃がんをのぞくすべての悪性腫瘍となっています。現在、日本核医学会より不明熱とアルツハイマー病についてFDG-PETの適応拡大の要望書が提出され、さらにFDGの自動合成装置についても"医療ニーズの高い未承認医療機器の薬事法承認申請"として薬事法の適応拡大申請が提出されています。
  2. 不明熱
    今から50年前に米国で発表された定義がもっとも有名で、"38.3℃以上の発熱が3週間以上の期間繰り返し出現し、1週間の入院検査でも診断がつかない"というものです。古い定義で状況が異なり現実的ではないので、今回は"38℃以上の発熱が、2-3週間以上繰り返し出現し、原因が不明のもの"と修正した定義が使用されました。
  3. 感度・特異度
    臨床検査の信頼度を評価するのに使われる指標。「感度」とは、疾患があるひとを正しく診断できた割合、「特異度」とは、疾患がない人を正しく疾患がないと診断できた割合のことをいいます。

発表内容に関するお問い合わせ先

国立国際医療研究センター 放射線核医学科 医長
窪田 和雄(くぼた かずお)
電話:03-3200-7181 FAX:03-3207-1038
e-mail: kkubota@hosp.ncgm.go.jp

取材に関するお問合せ先

国立国際医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
広報係長:三山 剛史(みやま つよし)
電話:03-5273-5258(直通) <9:00~17:00>
E-mail:tmiyama@hosp.ncgm.go.jp