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アピアランス(外見)の変化(乳房、毛髪・爪・皮膚、体重のことなど)

がん治療による外見の変化の苦痛は、なかなか人に打ち明けるのがむずかしいかもしれません。
でも、もしアピアランスの変化が気になる場合には、がまんせずに医療スタッフに相談して構いません。工夫によって、うまく対応できることもあります。周りの人の理解やサポートで気持ちが楽になることもあると思います。症状がなかなか回復せず悩む場合は、がん相談支援センターや病院のアピアランスケアの担当者に相談してみましょう。

以下のサイトもぜひご覧ください。
国立がん研究センター中央病院>アピアランス支援センター
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/appearance/index.html

手術による乳房の喪失・形の変化

乳房の全切除もしくは部分切除の手術を受けた後は、乳房の喪失または変形に対して、補整パッドや専用のブラジャーなどを使われているのではないかと思います。これらは術後の胸を保護し、ボディイメージを整えることに加えて、特に全切除の手術後は重みのある補整パッドでからだの左右の重さのバランスをとることにより、からだのゆがみを防ぐ役割があります。脇の下のリンパ節の切除(腋窩リンパ節郭清)を受けた場合や放射線治療を受けた場合には、リンパの流れが滞らないように締め付けの少ない下着を選ぶとよいでしょう。

乳房の形を復元したい場合は、乳房再建の手術を受けることも選択肢のひとつです。乳腺外科の主治医あるいは形成外科医にご相談ください。

手術の傷

手術による傷は治癒しますが、ケロイド体質の方は特に瘢痕として厚くなったり広がったりすることによって、傷が目立つようになることもあります。傷が目立つのが気になる場合、まずは乳腺外科の主治医に相談してみましょう。

術後の腕のむくみ

晩期合併症>手術 のページの腋窩リンパ節郭清をご覧ください。

抗がん剤による脱毛

乳がんの抗がん剤治療を受けたほとんどの方は脱毛を経験しますが、多くの方は全ての抗がん剤治療を終了してから平均3ヶ月程度で発毛が始まり、2年くらいすると半分以上の頭髪が回復します。日頃のケアである洗髪は、基本的に今まで使用していたシャンプー等を引き続き使用してかまいません。髪質の変化に合わせて製品を選択するとよいでしょう。毛根の周囲がピリピリ・チクチクする場合でも、発赤や発疹がなければあえてシャンプー等を変更する必要はありません。

パーマやカラーリングも可能ですが、以下の項目を確認しましょう。

  • 過去にパーマ剤、カラーリング剤(以下、薬剤)によるアレルギーや皮膚症状を起こしたことがない
  • 頭皮や顔、首筋などに腫れや傷、皮膚病がない
  • 薬剤の使用に適した長さまで髪が伸びている
  • 地肌に薬剤がつかないようにする(パーマ剤は頭皮から1~2cm離した位置から塗るとよい)

パーマやカラーリングの後、皮膚に問題が生じた場合は、皮膚科やかかりつけ医を受診しましょう。

抗がん剤による爪の変化

抗がん剤による爪の変化は、手では半年、足では1年ほどで元通りになることが多いです。
爪の変化への対処には、以下のような方法があります。

  • 爪が凸凹になったりひび割れたりする
    保湿クリームを塗りましょう。また、爪が割れないよう、マニキュアや液体絆創膏を塗って爪を保護する方法もあります。
  • 爪先がひび割れて洋服などにひっかかる
    絆創膏やテープを巻いて保護しましょう。
  • 爪の色の変化が気になる
    色をカバーするために、マニキュアを使ってみるのも一案です。ジェルネイルは剥がすときに爪に負担がかかるだけでなく、長期間つけることによって気がつかないうちにネイルの下に炎症が起きる可能性があるため、爪に変化がみられる時期には避けたほうがいいでしょう。 

抗がん剤や放射線治療による皮膚の変化

ドセタキセル、カペシタビン、ティーエスワン®のような抗がん剤を使用すると、顔のシミが増えたり皮膚が黒ずんだりすることがあります。皮膚が乾燥すると肌のバリア機能が低下し、紫外線の影響を受けやすくなるため、スキンケアの基本は保湿と保護です。たっぷりの保湿剤で保湿をし、外出する際は日焼け止めクリームの使用、長袖や帽子の着用、日傘などで紫外線から皮膚を保護しましょう。シミやくすみが気になる部分はコンシーラーでカバーするのも効果的です。抗がん剤治療による皮膚の変化は、治療終了後数ヶ月でよくなってくることが多いようです。
放射線治療では、照射部位の皮膚が赤くなります。特に、脇の下は皮膚同士がこすれて、ただれやすいです。放射線治療による皮膚の変化は、治療終了後3週間程度で軽くなってきます。皮膚の炎症が気になる場合は、軟膏の処方について医療スタッフにご相談ください。また、放射線治療後に抗がん剤治療を受ける場合、まれに皮膚の炎症が悪化する場合があります。気になる皮膚の変化がある場合も、医療スタッフに相談してください。 

体重増加

タキサン系薬剤(特にドセタキセル)によるむくみや、ステロイドの長期使用によって体重が増加することがあります。こうした体重増加は、治療が終了すれば徐々に改善してくるはずです。一方、食事や運動の習慣などの要因も体重に影響します。特に治療の影響で卵巣機能が低下すると、脂肪の吸収が促進され体重増加につながりやすくなります。また治療中の運動量が減って、二次的に体重が増加することもあります。適正な体重を維持することは、乳がんだけでなく、あらゆる動脈硬化性疾患による死亡リスクを下げることが分かっています。今日をきっかけに運動や食事など、ライフスタイルを見直してみましょう。病院では必要であれば栄養相談を受けることもできます。目安を設定して取り組むとよいかもしれません。

参考資料:J Clin Oncol. 2015; 34: 611-635.
日本がんサポーティブケア学会 編. がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版