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不妊症について

不妊症とは?

夫婦が避妊せずに通常の性生活を続けた場合に、2年以上たっても妊娠に至らない状態をいいます。ただし、妊娠しない期間が1年以上ありご夫婦の側に検査や治療を受ける希望がある場合や、1年に満たなくても女性の年齢が高かったり(35歳以上)、卵管や子宮に対する手術の経験があったりする場合には、不妊である可能性が高いと考えて早期の検査・治療を開始することもあります。生殖年齢にあり通常の性生活を行う夫婦のうち、不妊症となる可能性は約10%とされています。ただし、この可能性は特に女性側の年齢により大きく変わります。女性の妊娠しやすさは20歳代をピークとして、30歳代半ばにかけては緩やかに低下しますが、35歳以降は急速に低下し、40歳代半ばまでにほぼ0となります。妊娠を希望した時点で女性が35歳以上である場合、不妊症となる可能性は約30%ともいわれており、早期の検査や治療の開始が望ましいと思われます。

不妊症の原因

大きく分けると、男性側に原因がある場合(男性因子)と女性側に原因がある場合(女性因子)があり、女性因子はさらに排卵因子・卵管因子・頸管因子・子宮因子に分かれます。また、検査では異常を認めなくても妊娠に至らない場合もあり、原因不明不妊と呼ばれます。

排卵因子

女性の卵巣において卵胞が発育し排卵に至る過程で、脳下垂体から分泌されるホルモン 性腺刺激ホルモン(FSH, LH)及びプロラクチン が重要な働きをします。この3つのホルモンのバランスがくずれることにより、排卵障害がおき、不妊となります。また、排卵した後の卵胞からは、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され子宮内膜を妊娠に適した状態に保ちます。さらに、排卵後に基礎体温が高温となるのもこのホルモンの作用です。黄体ホルモンが充分に分泌されない場合には、高温期が短くなり妊娠の成立が困難となります。

卵管因子

排卵された卵子は卵管末端の卵管采とよばれるひだの中に取り込まれて、受精の場所である卵管膨大部へと運ばれます。子宮内膜症やクラミジアをはじめとする卵管内外の炎症、また子宮筋腫や卵巣嚢腫に対する手術あるいは虫垂炎など腸管などに対する手術の後に卵管の閉塞や癒着が生じることにより、卵管が正常に機能しなくなり、不妊の原因となります。

頸管因子

排卵期に性交渉により腟内に射精された精子は、子宮頸管の粘液中を泳いで子宮内に入ります。ここで、頸管粘液が少ない場合や、また抗精子抗体など精子運動を妨げる因子がある場合、精子は子宮内に入ることができず不妊の原因となります。

子宮因子

排卵後に卵管内で受精してから5から7日を経て、子宮内に輸送されてきた卵は、分裂を繰り返して胚盤胞と呼ばれる段階に至り、子宮内膜に着床します。この過程で子宮筋腫・子宮内膜ポリープ・子宮腺筋症などにより、着床が障害されると不妊となります。

男性因子

性交渉によって腟内に射精される精子は通常約2から3億ですが、このうち子宮から卵管を通って受精の場である卵管膨大部に達することができる精子は、数10から数100程度と考えられています。最初の射出精子の数が極端に少ない場合や運動性が悪い場合は、卵管膨大部に達する精子はほとんどいないことになり、受精に至りません。

当科生殖内分泌外来における不妊因子のスクリーニング検査

当科生殖内分泌外来では、不妊の訴えで受診された患者さんに対し、通常全ての因子について検査を行って原因となりうる因子を見いだした後に、治療方針を決めていきます。なお、これまでに他のクリニック・病院において既に検査を行っている場合は、検査結果を持参して頂ければ省略することもできます。
具体的には、下記の項目の検査を行います。

  • 排卵因子 月経開始2から6日目の脳下垂体ホルモン(FSH, LH, プロラクチン)測定
         高温期5から8日目の黄体ホルモン測定
  • 卵管因子 クラミジア抗原検査(抗体検査)、子宮卵管造影
  • 頸管因子 排卵前の頸管粘液検査、性交後検査(ヒューナーテスト)
  • 子宮因子 超音波による子宮形状の検査、必要に応じて子宮鏡による子宮内腔の検査
  • 男性因子 精液検査

不妊症に対する治療

不妊の原因となっている因子に応じて、以下のような治療を行います。

排卵因子

排卵障害に対しては排卵誘発剤(クロミフェン、FSH/hMG製剤)を使用します。黄体機能不全に対しては、排卵誘発剤により良好な卵胞を発育させホルモン状態を安定させるか、もしくは高温期における黄体ホルモン補助を行います。高プロラクチン血症に対しては、カベルゴリン(カバサールなど)を用います。

卵管因子

卵管周囲の癒着が強く疑われる場合や、卵管の通過性が不良である場合は、腹腔鏡手術を行い、癒着剥離などの治療を行います。ただし、手術によって機能回復がみこめない重度の卵管性不妊症に対しては、体外受精をお勧めします。

頸管因子

頸管粘液が少ない場合は、人工授精を行います。また、ヒューナーテスト陰性の場合は、人工授精あるいは体外受精をお勧めします。

子宮因子

不妊の原因と考えられる場合は積極的に手術を行います。子宮粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープに対しては子宮鏡下切除術を、筋層内筋腫に対しては腹腔鏡(補助)下あるいは開腹下の子宮筋腫核出術を行います。

男性因子

軽度の精子所見不良の場合は人工授精を行います。重度の男性不妊の場合には体外受精、顕微授精を行います。

原因不明不妊

明らかな原因を認めない不妊や、不妊原因に対して上記の治療を行っても妊娠に至らない場合には、既に述べた治療を組み合わせることになります。具体的には、排卵誘発剤の使用、人工授精、また腹腔鏡下手術による不妊原因の検索等を行います。原因不明不妊の場合にもこういった治療の組み合わせにより妊娠成立が期待されます。これらの治療によっても妊娠に至らない場合は、最終手段として体外受精・顕微授精をお勧めします。