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ベトナム出張報告
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院
リハビリテーション科医師 早乙女郁子
- 期間:2016年1月10日~13日
- 目的:現地協力支援先病院における新規の「医療技術等国際展開推進事業」のプロジェクトによる医療支援活動に関する調整会議への参加、およびリハビリテーション部門の視察のため。
1月11日(月曜日)ハノイ バックマイ病院訪問
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写真1
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写真2
午前:表敬・院内見学
現地で当センターの医療安全対策室スタッフを含む「医療の質改善」チームとコメディカル3部門(薬剤、放射線、臨床検査)の医療技術支援チームと合流した。
2015年から新規の「医療技術等国際展開推進事業」のプロジェクトとして、NCGMから以下の分野の医療支援を行っている。
- 病院の品質管理
- 診療科(薬剤、放射線、臨床検査)の能力向上の協力:すでにバックマイ病院から9名のコメディカルスタッフがNCGMに来て、2か月間の研修をしている。
- 脳外科臨床
- 看護管理
呼吸器内科・気管支鏡検査
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写真3
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写真4
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写真5
バックマイ病院DOI医師とNCGM廣井医師
循環器センター視察
CCU病棟(写真6)、心臓カテーテル室(写真7、8)は清潔区分の配慮がなされ、医療機器も充実した状況であった。センター受付待合(写真9)含め施設的には整備されており、廊下には治療技術や成績等などの掲示も多く見られた(写真10)。しかしながら廊下自体は狭く、往来も患者、付き添いの家族、医療者などで常時混雑し、接触しやすい状況であった(写真11)廊下の壁を一部タイルに張替作業していたが、作業領域の粉じん防御などの囲いもなく、作業者をよけて通行する場所もあった(写真12)。一般病室内では、入院患者に対し病床数の不足のため、患者は1台のベッドを2-3名の患者で使用していた(写真13)。病院敷地内もバイク、自転車通行含め、人の往来が多い状況だった(写真14)。病院外来待合・薬局周辺も、順番待ちの患者・付き添い家族で混雑しており、床に直接座ったり、横になっている人もいた(写真15-17)。
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写真6
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写真7
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写真8
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写真9
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写真10
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写真11
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写真13
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写真17
写真18
院内視察後、NCGMメンバーで記念撮影
午後:研修プログラム協議、リハビリテーションセンター見学
循環器センター内でバックマイ病院担当医師とNCGM医療安全チームによる、研修プログラム検討会議に同席した(写真19)。その後、別棟のリハビリテーションセンター(写真20)を訪問した。入口スペースにはストレッチャー上で診察待機している患者・家族がいた(写真21)。廊下には医療支援内容を表記したプレート掲示(写真22)と車いす駆動や歩行訓練のためのスペース(写真23)もあった。リハビリテーション医2名と、理学療法士15名が所属しており、入院、外来患者に対応していた。物理療法室の温熱機器、牽引機器は日本製であった(写真24-26)。ベトナムのリハビリテーション専門職は理学療法士 のみで、専門養成学校の卒業をもってその資格を得る。作業療法士、言語聴覚療法士はいずれも専門養成学校がないため、有資格者自体いない。ベトナムのリハビリテーション医や理学療法士も、国際協力支援や研修機会を通して、作業療法士,言語聴覚療法士が担う役割やその必要性は認識しているようで、小児患者の言語療法を理学療法士が実施している場面もみた(写真27-28)。一方で、作業療法士については国際協力機構(JICA)支援で滞在中の日本人作業療法士に一任され、その1名で多くの患者に対応している状況もうかがわれた(写真29-30)。理学療法室内では、東北大から支援を受けたという足こぎタイプの車いすで訓練室内を自走訓練している患者がいた(写真31-32)。義肢装具室もあった(写真33-34)。
写真19
研修プログラム協議
リハビリテーションセンター見学
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写真20
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写真21
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写真22
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写真23
物理療法室
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写真24
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写真25
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写真26
理学療法士による言語療法場面
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写真27
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写真28
日本人作業療法士(国際協力機構からの支援)による作業療法場面
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写真29
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写真30
理学療法場面
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写真31
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写真32
義肢装具作業室
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写真33
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写真34
写真35
ハノイ市街: 道路はバイク利用者が多い。ようやくヘルメット着用が義務化されたらしい。
1月12日(火曜日) ホーチミン チョーライ病院訪問(写真36、37)
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写真36 玄関
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写真37 病院外観
医療支援内容協議 / リハビリテーションセンター見学
同院の医療協力担当医師、および教育担当医師との医療支援に関する協議に同席した。
その後リハビリテーションセンター見学の機会を得たが、既に終業時間近くであったため、訓練実施場面は見ることができなかった。リハビリテーション室環境(写真38-41)と、診察場面を見るにとどまった。訓練室内は日本からの支援による訓練機器・用具も設置されており、比較的整備されていた。物理療法室のスペースは広く確保されており比較的その需要が多いことが推察された(写真42)。廊下壁にはリハビリテーションに関する掲示などが多くみられた(写真44)。
リハビリテーションセンター
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写真38
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写真39
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写真40
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写真41
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写真42
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写真43
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写真44
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まとめ
今回訪問した2病院においては、
- 医療設備、検査・診断技術等は日本とほとんど遜色がなかった。
- 大病院に受診希望する患者が集中し、院内、敷地内もどこも人が多く、混雑していた。入院患者に対して病床数は相当不足していた。患者の離床や日常生活活動(ADL: activities of daily living)支援は家族が実施していた。
- ベトナムでも病院の医療安全や品質管理が問われる現状にあった。
- 2病院ともリハビリテーション科が確立されており、リハビリテーション医診察のもと、理学療法士PT が患者訓練に対応していた。日本を含む、各国からの国際協力支援がすでにあり、車椅子やリハビリテーション訓練機器、物療機器などは比較的充実していた。
- リハビリテーション対象疾患は脳血管障害のほか、交通外傷を起因とした頭部外傷、脊髄損傷、骨折患者のようであった。訓練室の様子では、比較的若年~壮年層患者が多い印象だった。
- 病棟生活でのリハビリテーション的対応、入院期間や退院後の仕組みなどについては、今回知りえなかった。
- 作業療法士・言語聴覚療法士の専門養成校がないため、高次脳機能障害・言語障害のリハビリテーションは今後の課題と思われた。国際支援等を通して、作業療法や言語療法の専門知識・訓練認識は啓蒙されているようだが、実践面では海外からの医療支援者に依存している状況もうかがわれた。社会文化背景が反映される領域でもあるため、国内での専門職種の養成・教育は引き続き課題と思われた。