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海外視察報告(カンボジア)

カンボジア国におけるリハビリテーションの現状

目次

  • はじめに
  • 訪問先・訪問期間
  • 結果

1.はじめに

今回我々は、カンボジアにおける,リハビリテーションスタッフの教育体制及び医療現場での実状を調査し,国際協力の可能性を探ることを目的に,訪問調査を行った。

2.訪問先・訪問期間

養成校

  • Technical School for Medical Care(以下TSMC)

医療機関

  • National Maternal and Child Health Center
  • Calmette Hospital
  • National Pediatric Hospital

NGO

  • 国立キエンクリエンリハビリテーションセンター(AAR)
  • Disability Action Council(DAC)
  • 国立キエンクリエンリハビリテーションセンター(VI)

訪問期間

  • 平成18年3月13日から3月18日

3.結果

1.病院リハ

カンボジアの病院は、ほぼ全てが急性期病院である。保険制度はなく患者が病院を受診するのは、重症で緊急な対応が必要な場合が多い。低所得者は無料診療を受けられる(その補填は主に海外からの援助による。)。平均入院日数は約2週間である。

a.カルメット病院(以下、CH)のリハビリテーション部門

PTは4名で,2名が入院担当,1名(+助手1名)が外来担当,1名が心臓病棟担当である。年間の患者数は2935名となっている。

入院リハ部門:医師からの入院症例の処方文面は「KINE(フランス語でリハの意):4DAYs」という程度であった。ベッドサイドまたはリハ室でアプローチする。リハ室は40平方メートル程度で、マット台2,短い平行棒1,エルゴメータ1,鏡1,車椅子1,デスク1程度であった。午前10名、午後10名対応しているとのことであったが、訪問時患者はいなかった。

外来リハ部門:治療台1,マッサージチェア1,のある20平方メートル程度の室で、1日12~13名対応しているとのことであった.

物療と、歩行が可能な症例の簡単な訓練をしているような印象であった。見学した他のコメディカル部門(放射線・臨床検査・薬剤)は人数も多く管理職も存在し、設備も整い、何人かは英語で「フランスに留学した」等と自己紹介してくれたが、それに比べるとまだ院内での認知が低く、スタッフも若く、おっとりとしている印象を受けた。英語も日常会話程度であった。

b.National Pediatric Hospital(国立小児病院)のリハビリテ-ション部門

PT1名のみで、障害児対象ではなく肺炎児の呼吸理学療法(排痰)を主に行っている。1年以上前から、フランスのNGOからPTが1名指導に来ているため、実質2名で診療をしている。家族指導やカンボジア人PTの見学、PT学生実習生の指導なども権威をもって行っていた(体位交換指導や吸引をナースが行っていないようであり、PTがそのようなことをすることが喜ばれているようであった。)。しかし,午後には勤務しないでバイトをしているらしい。

2.リハビリテーションセンター

リハビリテーションセンターは、日本のように「亜急性期の機能障害の訓練をするところ」というより、「車椅子や補装具をくれるところ」「障害者の職業訓練所」等の存在である。

全国に12ヶ所ほど国立リハビリテーションセンターが存在する。国立リハセンターといっても政府は土地と名称,1名程度のスタッフを提供するだけで、建物,経費,運営はすべて海外資金のNGOである。多くは各1つのNGOが事業を行っているが、首都プノンペン近郊のキエンクリエンセンターでは、4つのNGOが6つの事業を行っている。今回は、そのうち3つを見学した。いずれも利用者の費用はすべて無料(NGO負担)である。

a.Association for Aid and Relief,Japan(以下、AAR):

(日本のNGOである。日本人のディレクターの下、車椅子工房と職業訓練校を運営している。

職業訓練校:地域の障害者に、宿泊料・授業料・諸経費支給で職業訓練を行なっている。1年コースで、テレビ・ラジオ修理コースと縫製コースとオートバイ修理コースがある。職業訓練校だが、受講者の学歴を鑑み、識字教育など一般教育も行なっている。

車椅子工房:地域の障害者に無料で車椅子を作成している。スタッフは7名で、申し込みがあると採寸に出向き、家屋状況や使用目的も勘案してオーダーメードの車椅子を作成し、届ける際には使い方の指導も行なっている。修理依頼も多い。予算の都合上、月間25台を産生している。

b.Veterans International(以下、VI):

カンボジアで広く活動しているNGOである。国内で他のリハセンターにも関わっており、また、CHの運営にも関わっている。ここで運営している「リハセンター」は義肢装具工房である。交付希望者の診察から作成、短期滞在しての装着訓練までを行なっている。PO中心のスタッフで、褥瘡など医療的対応が必要な場合には関連する医療機関を紹介している。少人数だがPTもおり、希望者の診察・適応判定、および着用・利用者指導が役割である。

3.養成校とPT教育,進路など

TSMCは、カンボジアで唯一のPT学科のあるコメディカル養成校で、他に看護,放射線,検査学科がある。かつてはフランス政府、現在はJICAが支援している。TSMCは看護師の養成校としてスタートし、1987年にPTコースが始まった。定員40名だがかつては受験者数が少なく平均17~18名の学生数で、今年初めて40名となった。20名が奨学生で20名が私費での就学生である。奨学生は推薦で決まり、私費学生のみ試験がある。今年は3-4倍の倍率であった。志願者が増えたのは、高校生のなかでPTという職種のイメージが改善・普及したというより、都会に出たい若者がチャンスのひとつとして選んでいて、看護学科とPT学科を両方受験したりするらしい。

教員は20人で、うち常勤の教員は医師1人,PT4人の計5人,残りは非常勤である。カリキュラムは、3年生では総時間数3247時間で、理論(Theory)1326時間(1/3),実習(Clinical)1215時間(1/3),理論・実習の混合(mix)が残りの時間(1/3)となっている。

TSMCの授業はクメール語で行われ、教科書はフランス語をクメール語に教員が翻訳したものが用いられている(カンボジアの医学系教育にはフランスが長期間にわたり各種援助をしており、医学用語はフランス語,英語が中心である。)。

卒後の就職は、公立病院への就職が1~2名、あとは海外NGOが運営するリハセンターへの就職である。リハセンターの方が給料が良く、英語も覚えられるなど今のところ人気である。しかし、今後増加する卒業生のためにも公立病院のポストの増加,病院内での地位の向上・給与のアップを図る必要がある。

4.カンボジアのPT協会

ライセンス所持者はTSMC卒業生の198名、現職者は150名と推定される。カンボジアのPT協会は一時活動が休眠しており、最近再開した。運営資金もNGOに多くを頼っているのが現状で、卒後研修もNGOの企画するプログラムに第一陣が参加したところという状況である。なお、インフラの発達していないカンボジアではPT協会費も振込みではなく手渡しで(人に託したりして)集めている。

5.その他のリハ職種

地雷被災者への援助の歴史から、義肢装具士(Prosthetist&Orthotist:以下PO)の存在は普及しており、NGO運営の養成校は近隣他国からの研修も受けるレベルにある。OT的な対応は一部リハセンターであるらしいが、STアプローチはないようであった。

6.カンボジアの医療と諸外国からのNGO

ポルポト政権で多くの知識人と産業基盤を失い各種システムが崩壊したカンボジアにおいては、医療関係の復興は解放後の諸外国の支援にその多くを依存してきた。カンボジア人による、運営・援助なしの会計が望ましいことは理解されているが、まだその移行は不十分である。予算の多くは道路下水道などのインフラや教育・産業振興に割かれ、福祉やリハの予算は少ない。

7.調整機関

NGOが複数関与し、しかも撤退や参入が独自に行なわれている状況を調整することが必要との認識が高まり、リハに関連する欧米の複数のNGOと政府との関係を調整する機関、Disability Action Council が最近設けられた。

4.考察

リハのみならず、病院医療に関してもNGOの関与の大きいカンボジアにおいて今後、有効な国際協力を進めるにあたっては、各機関の連携に配慮することが重要である。その上で、教育体制,就職体制(特に病院におけるPTの地位向上),PTの技術向上の3者を整備することが必要と思われた。